Pixel7 Proが2022年10月13日に発売になりました。発表自体は2022年5月に開催されたGoogle I/Oにて既になされていました。正式に発売日が発表されたのは2022年10月6日のことです。
10月6日の発表の時に価格が公表されました。Pixel 7 ProはGoogle Storeにて124300円からとなっています。Pixel7は82500円とハイエンド端末の価格としてはかなり割安です。
Google Tensor G2はどう進化したのか
もちろんGoogle Tensor G2チップが本当に「ハイエンド端末」と呼べるのか?という点の評価はあると思います。ベンチマークスコアはSnap Dragon 8 Gen1世代機と比較して劣っていることは明らかだと思います。しかし、Tensorの性能で既に3Dのゲームをゴリゴリに動かすという用途以外では必要十分な性能を有していると思います。ほとんど全てのユーザーにとってPixelシリーズで性能不足で困ることはないのではないでしょうか。そしてゲーマーはちゃんとそこを理解して機種を選択できると思います。
Tensor G2の性能は2021年発売のTensorと比較して大幅な性能向上は期待できません。ベンチマークソフトで計測した点数だと1割程度の性能上昇にとどまるという話もあります。
Tensor G2では電力効率の向上、セキュリティの向上、画像処理性能の向上とソフトウェアの向上による写真の品質向上と動画の品質向上、ユーザーの声を認識したり家族や友人の名前やお気に入りの場所などを認識した音声認識、ゲーム処理性能の向上が果たされたとGoogleは発表しています。
カメラの品質向上
Pixel 7 Proにだけ搭載された望遠レンズは工学5倍(35mm換算 117mm)の焦点距離を持っています。屋外でのポートレート撮影なんかに適した画角ですね。スマートフォンのカメラの画角表記は焦点距離が書かれた情報がなかなか見当たらず感覚的にわかりにくいです。超解像ズームを利用すると30倍になるそうです。メインカメラの画角は35mm換算で24mmだそうです。35mm換算24×30=720mm程度ということでしょうか。ここまでの望遠となると飛行機・レース・野鳥などの野生生物・スポーツ撮影で求められる領域になると思いますがスマホで動体撮影となると優秀なAFと速いシャッタースピードに耐えられるだけのセンサーサイズが求められますが、どう考えても専用機で撮影したいジャンルになりますね。
次もPixel7 Pro専用になりますが望遠以外だとマクロ撮影機能が搭載されています。こちらはかなり便利だと思います。マクロ撮影はAF性能が求められませんし止まった被写体はさほど不利になりません。
カメラ機能で普段遣いで最も便利になるのはマクロ撮影機能だと思います。
セキュリティ機能の向上
Tensor G2とTitan M2セキュリティチップを搭載しているおかげでセキュリティ機能が向上しています。一番使い勝手を向上してくれるのはおそらく顔認識への対応です。画面内指紋認証の欠点はガラスフィルムを利用すると指紋認証の精度が低下することがあることです。指紋認証のみしか使えないのはかなりの欠点となります。
ただし顔認証は通常のカメラで撮影した画像を処理して実行されているようで、セキュリティレベルが指紋認証より落ちるとGoogle側も判断しているようで端末のロック解除にしか使えません。
iPhoneのように専用のハードを搭載して顔を立体的にスキャンしているわけではないのでどうしても同等のセキュリティレベルを確保することは困難でしょう。またiPhoneではFace IDがマスクに対応しましたがPixelではマスクは非対応です。今後マスクをしなくても済むような社会に徐々になっていく流れにはなると思いますがこの点は今一歩だと思います。
また近日提供予定とされているGoogle One VPNが組み込まれています。こちらはどんな機能に具体的になるのかわかりませんが組み込まれているとのことでサーバーサイドの処理ではなく端末のチップを使った処理になるのでしょうか。
現状のGoogle One VPNはプレミアム2TBプラン(月額1300円)の加入者のみが利用できるサービスとなっています。公衆Wi-Fiなどの保護されていないネットワークを利用するときのセキュリティ向上やIPアドレスをサーバー側に非開示にしてオンライントラッキングを減らすなどが可能になるとしています。
AppleのiCloud+で提供されているプライベートリレーと似た機能です。こちらはVPNではないですがサーバー側にIPアドレスを開示せずにアクセスすることができます。有料のプランとなりますがこちらは50GB(月額130円)以上のプランで使えますので月額1300円が必要となる現状のGoogleより圧倒的に安価です。
無印7かプロのどちらにするか
無印のPixel7とProで大きく違うのは大きくは次の3点です。
- メインメモリの容量(Proは12GB、無印は8GB)
- ディスプレイのサイズ(Proは6.7インチ、無印は6.3インチ)、リフレッシュレート(Proは120Hz、無印は90Hz)とエッジディスプレイの有無(Proは左右のディスプレイの縁が局面になっているためガラスフィルムなどの選択肢が減る・操作しにくくなるなどのデメリットが有る)
- カメラの機能の有無(Proはマクロ撮影、超解像30倍搭載)
これらの機能全てで私はProのほうがいいなと思ったので昨年に引き続きProを選択しました。逆にこれらの機能が必要ない人は圧倒的に無印の方がコストパフォーマンスに優れているため無印を選択したほうがいいと思います。
予約購入すると圧倒的にお得な価格戦略
本当はPixel 6Proを使い続けるつもりでした。Tensor G2が処理性能では大幅な向上がないと事前に噂がありましたのであまり大きくは変わらないだろうなと思っていたためです。
しかし発表を見てみるとTensor G2のAI処理やセキュリティ面の向上により使い勝手が明らかに向上してるだろうなという期待が生まれました。
そこに更に決定的になったのは本体価格と魅力的な下取りプログラムでした。
発表された当時の為替レートは1ドル145円程度だったと思います。かなりの円安となっていて輸入に頼るガジェット類の購入は冬の時代になってしまいました。私は昔Nexus4を転送サービスを使用して輸入したことがありますがこちらは28000円で購入できた記憶があります。もちろん端末価格がもともと安かったのもありますが円高のおかげでかなり割安で購入できたのがちょうど10年くらい前だと思うと随分変わってしまったなと思います。
そんな中Pixelの価格は1ドル125円程度でレートとなっています。かなり日本を優遇した価格だと思います。さらに下取りプログラムでPixel 6もPixel 6 Proも61500円で下取りしてもらえます。すぐに中古の買い取り価格を調べたところ大手のお店では61500円かそれよりも下になっていました。下取りを利用しない手はありません。
更に下取りに加えてGoogle Storeでのみ使えるクレジットとなりますがこちらが無印7で21000円分、Proで35000円分つきます。こちらは1年間有効となります。
これらの価格戦略により本来は購入しないと思っていた私でしたが購入する気100%に変わってしまっていました。
まとめ
Googleのハード戦略は変化してきていると思います。昔のNexusシリーズはあくまでも開発者向けのリファレンス端末でした。その後Pixelブランドが展開されましたが当初は日本では販売されませんでした。
Googleの収益のほとんどは広告によるものとなっています。Googleは無料で使えるサービスが今まで主流でした。無料だからこそ、そのサービスは突然終了となったりしましたのでGoogleのサービスはいつ終わっても文句が言えないという欠点もありました。
ハード戦略の重視はハイエンド市場でのAndroid端末があまり売れなくなってきてしまっていることもあるかもしれません。調査会社Counterpiontによると2022年1月~3月の世界のハイエンドスマホ(400ドル以上の端末)市場のシェアトップはAppleで62%となっていて前年同期比で5%アップしているのに対して2位のサムスンは16%と前年同期比18%から2%シェアを減らしています。
Googleはハードのブランド戦略で成功したことはありません。Chromebookもハードを製造販売しているのはパートナー企業です。昔からWi-Fiルーターを製造販売していましたがあまりぱっとしませんね。
一方で最近のGoogleのハードで成功を収めつつあるものはChromeCastとNestシリーズではないでしょうか。これらは今後のスマートホーム戦略の中核を担う重要なプラットフォームだと思います。そしてYoutubeをはじめ、スマートホームと連携すると便利になるであろう各種サービスをGoogleはすでに持っています。検索やカレンダー、地図、Workplaceなどスマートホームと関連付けたら明らかに面白そうなサービスがあります。
スマートホーム戦略で重要なのは端末だと思います。スマートホームと聞くとAmazonのAlexaを想像してしまいますがAmazonの欠点はモバイルデバイスを持っていないことです。FirePhoneというスマートフォンが販売されたことがありましたがOSはAndroidベースで成功しなかった過去があります。
マイクロソフトはソフト中心でした。2010年代にクラウドを重視した戦略が成功を収め、Microsoft365などを一般ユーザーには提供しています。Word、Excelなどのオフィス関連製品と関連付けたサブスクリプションサービスです。ハード戦略はMicrosoft Surfaceシリーズを展開していますがこちらはPCのみです。昔Windows Phoneというものがありましたがこちらも失敗に終わっています。Microsoftもモバイルデバイスはうまくいきませんでした。
Appleは圧倒的にハードが強い会社です。PCはMacシリーズ、タブレットはiPad、スマートフォンはiPhoneでそれらの端末が連携して使いやすくできています。更にアクセサリではAirPodシリーズ、Apple Watch、AirTagなどがあります。Appleはスマートフォン市場を大きく発展させ、タブレット市場を切り開き、無線イヤホン市場を開拓し、Apple Watchによってスマートウォッチ市場を開拓しました。一方でスマートホーム戦略はどうでしょうか?
Appleのスマートホーム向けのデバイスはApple TVとHomePodがあります。AmazonとGoogleではあるドアベルやカメラはありません。さらにディスプレイがついたHomePod、Googleで言えばNestHubに相当するデバイスがそもそも存在しません。明らかにAmazonとGoogleと比較すると弱いと言わざるを得ません。
これらのライバルの動きを見てみるとGoogleが同時にPixel Watchを販売してきたのも意味があると思います。WearOS搭載のスマートウォッチは今までパートナー企業が提供してきました。しかしApple Watchと比較して明らかに負けています。それは販売数もそうですし、端末が提供してくれるユーザー体験を見てみてもそうだと思います。Google本体がスマートウォッチを出してきたのもGoogleがスマートフォンとスマートウォッチで統合されたユーザー体験を提供し、ハードのブランドを強化することでスマートホーム全体でGoogleの価値を高めるという目的があるように思えます。
今回のPixelシリーズの発表は単に新しいスマートフォンが発売されたという事実だけにとどまらない意味があるように思えます。日本人からすると優遇された価格戦略がありますのでiPhoneを選択しない人にとっては魅力的な選択肢になると思います。
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