近年、自由な携帯電話の使い方が広まってきました。キャリア経由でなく、直接携帯電話端末を購入したり、MNP(Mobile Number Portability)を利用して既存の端末を新たなキャリアで活用するといった選択肢が増えてきています。
しかし、その一方で、自分の端末がどのキャリアで使えるのか、あるいはどの周波数帯・バンドを利用しているのかということについて、普段から意識する必要がありませんがMNPでキャリアを移動しようとしたりメーカー以外から端末を調達する際には意識する必要があります。今回は端末選びやMNPでキャリアを変更する際にdocomo、au、SoftBank、楽天モバイルの4つの主要なモバイルキャリアが利用している周波数・バンドについてわかりやすくまとめました。
4G
4G周波数は現在メインで使われています。携帯各社で都会から郊外、地方までこれらの周波数を使い分けて日本全国を網羅しています。最近発売された端末であれば基本的にほぼ問題なく対応している端末が多いと思いますが、キャリアから購入された端末の場合は携帯各社が自社のバンド以外は対応させないようにしているケースもあるため注意が必要です。
4G周波数一覧
周波数 | docomo | au | SoftBank | 楽天モバイル | メモ |
700Mhz帯 | バンド28 | バンド28 | バンド28 | – | プラチナバンド |
800Mhz帯 | バンド19/26 | バンド18/26 | – | – | プラチナバンド/楽天モバイルのパートナー回線(au)では18/26対応のいずれかの対応が必要 |
900Mhz帯 | – | – | バンド8 | – | プラチナバンド |
1.5Ghz帯 | バンド21 | バンド11 | バンド11 | – | |
1.7Ghz帯 | バンド3 | バンド3 | バンド3 | バンド3 | |
2.0Ghz帯 | バンド1 | バンド1 | バンド1 | – | 国際標準バンド |
3.5Ghz帯 | バンド42 | バンド42 | バンド42 | – |
重要な役割を果たすプラチナバンド
700~900Mhz帯はビル等電波が届きにくい場所でも比較的電波が届きやすい周波数とされ、その重要性からプラチナバンドと呼ばれています。docomo・au・SoftBankの3社が運用しており、楽天モバイルはこれを持っていません(2023年7月現在)。
プラチナバンドに対応した端末を利用していないと都市部であってもビル内では繋がりにくくなってしまう可能性があるため、注意が必要です。
バンド26が18・19とセットになっている理由
上記「4G周波数一覧」の表を見てみるとdocomoとauのところにバンド19/26、バンド18/26とあります。バンド26はMFBI(Multi Frequency Band Indicator)という技術で、1つのバンドに対して1つの一定の周波数のみを取り扱うことしかできなかった従来のバンドの取り扱いに対して、複数のバンドをまとめて取り扱うことを可能にするものです。つまりバンド26に対応した端末であれば18・19のいずれのバンドであっても使用することができる、つまり内包していると考えてください。
auでは早期にバンド18/26対応として導入していました。一方でdocomoでは2020年頃より同技術に対応し始めており、割と最近になってバンド26対応端末だけど19には対応していなかった端末が利用できるようになった経緯があります。現在では26に対応していればdocomoとauの800Mhz帯には対応していると考えてよいです。18・19のどちらかにしか対応していないのであればdocomo・auのいずれか一方のみの対応と考えてください。
auバンド18/26への対応は楽天モバイルでも必要
2023年6月1日以降、順次「楽天最強プラン」を展開している楽天モバイル。このプランの特徴は今までデータ通信の制限が楽天モバイル回線のみが対象となっていたのがパートナー回線であるauの回線でも無制限になったことがあります。これにより従来は5GB/月(それ以降は1Mbpsに制限)がなくなりました。
楽天モバイルでもau回線の一部バンドを使用できます。楽天モバイルユーザーでも使用するauの回線が800Mhz帯のバンド18/26です。楽天モバイルのバンド3の基地局の電波が届かない地域ではauのバンド18/26を使用していく形となりますので楽天を利用する方は対応している端末を利用しましょう。
5G回線
5G回線は4G回線よりもさらに広いスループット、短い遅延、同時接続数の増強(4Gの10倍程度、1㎢あたり最大100万台)を特徴とした次世代の通信方式です。従来の4Gと比較して飛躍的に性能が高まる一方で、利用できる周波数の問題などがありエリア展開がなかなか進んでいない現状があります。2020年3月よりdocomo・au・SoftBankの3社が商用サービスを開始しましたが3年後の2023年現在の東京都内でも非対応エリアが散見されます。また基地局整備に時間がかかることから、5Gの特徴である低遅延・広いスループット・同時接続数のメリットを妥協して、当面は4G基地局と併用する基地局がエリアの大半を占めているのが現状です。
5G周波数一覧
周波数 | docomo | au | SoftBank | 楽天モバイル | メモ |
700Mhz帯 | n28 | n28 | n28 | ||
1.7Ghz帯 | n3 | n3 | |||
2.3Ghz帯 | n40 | 放送業務や公共業務で割当の周波数。2022年にauに割り当てられた。auが利用するには既存の事業者がこの周波数を利用していない場所・時間に限定される。非常に使いにくい周波数となっている。時間と場所を管理するダイナミック周波数共用管理システムを利用する。2.3Ghz帯が利用できない時間ができたとしてもau側はその他の周波数の基地局を整備しておき2.3Ghz帯の基地局がカバーするエリアをカバーしておかなければいけないという制約があります。メインのバンドを補完する役割に留まると予想されます。 | |||
3.4Ghz帯 | n78 | n77 | |||
3.5Ghz帯 | n78 | n78 | |||
3.7Ghz帯 | n78 | n77/n78 | n77 | n77 | |
4.5Ghz帯 | n79 | ||||
28Ghz帯 | n257 | n257 | n257 | n257 | 現状(2023年)はエリアは非常に限定されています。 |
現状は非常に限られた範囲とバンドしか利用されていない5G
5Gの特徴は4Gにはない極端に高い周波数帯を利用できることです。電波は一般的に周波数が高ければ高いほど直進性が高まるためビルの中等でつながりにくくなる一方で高速な通信が可能になるという特徴があります。
Sub-6とミリ波という単語を聞いたことがあると思います。Sub-6は6Gh以下(主に0.45~6Ghzの間)の周波数のことを指し、それ以上の周波数をミリ波と呼んでいます。コストやエリア展開の難しさから現状ではどのキャリアも700Mhz~4.5Ghz帯のバンドをメインで展開しています。
docomoは当初は5Gの持つ通信品質にこだわりをみせ4Gのバンドの転用などには消極的だったのですが2022年以降は人口カバー率を向上させるという目標を掲げ、エリア展開を急いでいます。au・SoftBankは4Gバンドの転用である700Mhz帯のn28、1.7Ghz帯のn3を用いつつ、3.4~3.7Ghz帯の周波数を展開してサービスエリアの拡大を図っています。
docomoで利用する場合はn79対応を確認するのがポイント
現状では5Gで端末選びで一番使用エリアに影響があるのがdocomoを利用する際にn79対応の端末を用意できるかどうかです。
n78は国際的に採用されているバンドで世界的に見ると使っている国が多いのが特徴です。一方でn79は世界的に見て利用している国が極端に少なく、日本以外では中国とロシアのキャリアで利用されています。世界的に採用している国が少ないこと、日本ではdocomo以外では使えないため対応端末が限られています。auやSoftBankから発売された端末をそのままdocomoで利用する際にはn79に対応しているかをしっかり確認しましょう。また日本向けではなく海外向けの端末でもn79に対応している端末は少ないため海外端末を使用したいマニアの人や海外からの渡航者は注意が必要です。
docomoは早期からn79をメインバンドとして展開していましたのでn79非対応端末だと都心部であっても圏外になってしまうということにもなりかねません。docomoおよびdocomo系MVNOで5G利用をする場合にはチェックポイントとなっています。
au・SoftBankのn78はn77に対応していれば大丈夫
n77は3.3~4.2Ghzまでの周波数のバンドで、n78は3.3~3.8Ghzの周波数のバンドです。n77はn78を含んでいますのでn77対応端末であれば利用できます。
n78は世界的に採用している国が非常に多く国際的なバンドとなっているのが特徴で対応している海外向けの端末でも対応している端末が非常に多いのが特徴です。n77は日本、中国、韓国、アメリカ、ヨーロッパで採用されています。
5G対応は問題が山積み
5Gの特徴である低遅延、幅広いスループット、より多くの同時接続数という特徴は専用に基地局を整備する必要があります。現状では携帯各社は4G基地局とコアネットワークなどを共用する基地局であるNSA(Non-Stand Alone)と言われる基地局の整備に注力しています。反対に5Gの特徴を享受できる基地局はSA(Stand-Alone)と言われています。
SAのサービスを利用するためには基地局側の対応はもちろん、端末側およびSIMカードの対応が必要です。SAのサービスはdocomoでは2022年8月24日よりサービスが開始され、当面は無料とされていますが月額550円(税込み)で開始されています。auは2022年4月13日より、SoftBankは2021年10月からSA方式のサービス提供を開始しています。
周波数が届きにくいという問題、基地局側の対応等様々な問題がありエリア展開が進んでいないのが現状です。また利用者の視点から見ても対応周波数や端末、SA方式は別途契約が必要になるなど複雑な一方で享受できるメリットが非常に少ないです。5Gで接続しているのに4Gと速度差がほとんどないという場合も多いのが現状となっています。今後もしばらくは通信のメインは4Gが担っていく現状が続きそうです。
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