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アメリカの介護施設の電子化率は26%

Techcruchの記事でアメリカの介護施設(assisted living:介護を受けながら暮らす形態の介護施設。日本でいう有料老人ホームに近い)での業務の電子化、効率化に取り組むAugust Healthというベンチャー企業の取り組みについて紹介されています。

この記事からはアメリカの介護施設では電子化が進んでおらず、そのせいで業務が煩雑になっていることがわかります。具体的には業務量過多による離職と人材獲得の問題、事故状況の把握が困難なことと事故が発生しやすい環境になってしまうこと、紙による情報共有だと複数の紙に情報が分散して情報が更新された際にどれが最新情報なのかを特定するのに時間がかかることなどです。

アメリカの電子化が進んでいない施設は74%

紙ベースの情報共有システムに依存している場合、情報が複数の紙に分散してしまったり、事故状況などを統計的に可視化することが困難なため事故予防の対策が取りにくいといった問題があります。

まず、紙ベースの情報共有システムの場合は複数の紙にまたがって1つの種類の情報が記載されることがあります。例えば、内服薬の情報が書類Aと書類Bのどちらにも記載されている場合に内服薬が変更された場合にはAとBの書類両方を変更しなければいけません。内服情報を変更するのに2回情報を書き換えなければいけません。それだけで手間が二倍ですし、そもそもどの書類に内服の情報が記載されているかを把握することも難しいです。情報が更新された場合、すべての書類の情報を書き換えなければ、職員が間違った薬を飲ませてしまう可能性が残ります。つまり事故の可能性があるわけです。

おそらくほとんどの現場では本当にその情報が最新で正しいのかどうか、他の書類と比べたり、状況などから推測して判断していると思います。複数の情報を確認するのは時間がかかりますし、職員の熟練度を必要とします。この業界の問題点でもあるのですが、個別的なケアなど熟練度を要する業務が多く、業務が複雑で時間がかかるため長時間労働になりやすいです。そのため離職率が高く、新しい職員が業務の複雑さに慣れる前にやめてしまうといった問題があります。

電子化した場合には例えば内服薬の情報であれば内服薬の変更があった場合には内服薬の情報を更新すればその他のページで内服薬の情報を参照するページがあったとしても同時に更新することができます。このようにすれば情報を更新する手間が合理化できますし、どれが本当に最新の情報なのかを確認する手間が省けます。

事故はどの施設でも発生するものですが、紙ベースだと事故の発生状況を統計的に見ることが難しいです。転倒・転落事故が増えているのか、増えているとしたらどういう状況で増えているのか、どのような原因が多いのかなどを分析することは今後の事故予防では大変重要な情報です。電子化することによってこれらの情報を可視化することができます。可視化されれば具体的な事故予防のプランを立てるのも簡単になります。

家族からの情報を積極的に活用できる

August Healthのシステムでは家族から情報を入力して情報を更新したり、施設でのケアの状況について簡単に確認できたり、料金について確認できるポータルサイトを用意しています。

従来の施設ですと、何か確認するべきことなどがある場合には電話連絡をするか、電話するほどでもない場合には面会の際に確認するなどして対応しています。電話連絡は手間ですし、情報が一方からのものとなりがちです。ポータルサイトを使えば家族に対して現状のケアについてわかりやすく説明できますし、家族からの情報も同時に簡単にもらうことができます。

施設介護のために作られたツールが少ない

アメリカの電子化システムの問題点は施設介護のために作られた専用のサービスが少ないということです。

例えば他の業界向けに作られたシステムを開発している会社がたまたま買収して施設介護のツールを付け加えたようなシステムだったり、亜急性期の病院レベルの看護業務向けのシステムを改修して作られたために施設職員が使うのが難しいといった問題があります。

日本の介護施設の電子化

日本の介護施設でも電子化が推進されています。

団塊の世代の全員が後期高齢者(65歳以上を高齢者、75歳以上を後期高齢者と区分していて後期高齢者は介護が必要な人が多い)になる2025年問題は介護需要に対して介護職員の数が圧倒的に不足するといった問題が出ると言われています。

その対策の一つとして業務の効率化として電子化が求められています。日本の場合には公的な保険によって業務の内容や介護報酬が決定されてしまっているので、頻回に変更される介護報酬改定などに対応できるシステムが必要だと思います。SaaS(Software as a Service)型のシステムは変化に対応しやすく、介護報酬の改定に対応しやすいため向いていると思います。

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この記事を書いた人

好きなこと、自分の経験したことなどを皆様に向けて発信できたらいいなと思ってブログを始めました。
好きなことは自作パソコン、Apple製品やAndroid端末やスマートウォッチなどを含むガジェット系、バイク、筋トレなどが好きです。
中学1年生の頃にパソコンとインターネットに興味を持ちました。中学生時代は自作パソコンにハマりました。
IT用語辞典に書いてあったユビキタスネットワークという言葉に興味を持ち、将来人々が手にもつ端末は一体どんな形をしているのかと考えて10代を過ごしました。
法学部在学中に家族が病気になり、看護師に興味を持ちました。
法学部卒業後に看護学部に入学し卒業後に総合病院・特養・訪問看護ステーションで働きました。
現在は看護小規模多機能型居宅介護施設併設の訪問看護ステーションで働いています。

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